第二章「物件の契約前日――。飯田は苦渋の判断を下した。」
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■■ 妻が納得してくれるまで、想いを語る
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「飯田さん、そんなことやっていたら失敗しますよ!」
当初、講師と受講生だった関係は、
いつしか自身の夢を相談できる関係になっていた。
島居のアドバイスが、
飯田の夢をより現実的な方向へと導く。
そうして相談を重ねること数か月、
ついに飯田は決意を固めたのである。
「夢だった飲食店に勝負を賭けてみよう!」
種銭は、今まで蓄えてきた貯金。
もちろん、自分一人のお金ではない。
妻が納得してくれるまで、飯田は自分の想いを語り、説得した。
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■■ 何百もの物件から探す地道な日々
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時は2009年9月。
夢の実現に向けて、ひとつのプロジェクトチームが立ち上がる。
島居を始めとする、
飲食店開業や会社設立に精通した4名のプロ集団が
飯田をサポートすることになったのだ。
何もかもが初めての飯田にとって、心強いメンバーだった。
業態は以前から飯田の構想にあった焼肉店に決定。
イニシャルコストを算出することから始まり、
予算が決まると、次は物件探しに時間を費やす。
生まれ育った神奈川県で店を出したいと考えていた飯田は、
時間を見つけてはインターネットや不動産屋から送られてくる情報を頼りに
物件を探した。
何百軒とある物件情報の中から、
選び抜いたのは本厚木にある物件。
人の流れも悪くない。飯田は契約に踏み切る考えだった。
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■■ 苦渋の決断を強いられる
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しかし、チーム内からは懸念の声も聞こえてきた。
「契約する前に、一度、
立地診断をした方がいいかもしれない」
いらぬ心配だとも思っていたが、
飯田はアドバイスに従って、専門家に売上高のシミュレーションを依頼。
その結果、
予想していた売上には至らないだろうとの厳しい診断が下された。
契約するつもりでいた飯田は、
すでに数十社の業者から見積もりを取り、
翌日には不動産屋に足を運ぼうとしていた。
その前日の出来事・・・。
苦渋の想いで、契約を断念することにした。
(つづく)